
2026.09.18 (金) - 09.27 (日)
オープニングレセプション:09.18(金) 17:00~
『木彫りの______』は、ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川の館長を務め、7年間にわたり京都で暮らしたエンツィオ・ヴェッツェル氏が、その間に出会い、関心を抱いたものを紹介する展覧会です。
ここに集められるのは、必ずしも希少な品や、一般に「日本的」とみなされるものではありません。また本展は、外国人の目に映った日本の「奇異さ」を並べるものでもありません。むしろ、ある文化に属するものが、本来の用途や意味から一時的に切り離されたとき、そこにどのような形や印象が立ち現れるのかを考える試みです。
展覧会のタイトルは、北海道の民芸品として広く知られる「木彫りの熊」に由来しています。しばしばアイヌの伝統工芸品と思われがちな木彫り熊ですが、現在よく知られる起源の一つは、1920年代にスイスのベルンから北海道へ持ち込まれた土産物にあります。尾張徳川家の徳川義親がスイスで購入した熊の木彫りを八雲町の農場へ送り、冬期の収入源としてその生産を勧めたことで、やがて北海道を代表する民芸品として定着していきました。異国から来たものが土地の文化へと取り込まれ、いつしかその土地を象徴するものになる――木彫り熊の来歴は、文化や伝統が決して一つの場所にとどまるものではなく、移動と模倣、解釈のなかで形づくられていくことを物語っています。
私たちは日常のなかで、ものをその効能や役割を通して理解しています。しかし、その作用を知らない者の前では、シニフィアンとシニフィエの結びつきが一時的にほどけ、ものは用途には還元されない形や存在感を帯びはじめます。エンツィオ氏が日本で「興味を持った」ものをあらためて眺めることは、彼の視線をたどるだけでなく、私たち自身が慣れ親しんだ文化を、既知の意味から解放して見直すことでもあります。
タイトルの空欄に入るはずの「熊」という言葉が取り除かれると、「木彫りの」という形容だけが残され、その先にあるものを私たちは想像することになります。他者の視線を通して見えてくるのは、「異文化」としての日本ではなく、私たち自身がすでに見ることをやめてしまった、身近なものの不可思議さなのかもしれません。
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敬愛する日本語の先生、石井潤一郎氏とのレッスンでは、ときどき、あてもなく歩く散歩のように、話が長く続くことがありました。あるとき彼は、今和次郎と、その祖父の「国学」、そしてそれに続く今和次郎の「考現学」について話してくれました。
わたしたちは今日、どこに立っているのでしょうか。今日、わたしたちが実践しているのは、いったいどのような「学」なのでしょう。もしかすると「何でも学」――あらゆるものについての学――なのかもしれません。
鴨川沿いを歩いているとき、横浜の郊外で、あるいはサラ川の山々で見つけるもの。そして、日本各地に無数にあるリサイクルショップや古物店で、過去の世代が残したものがわずかな値段で売られているのを見つけること。そうして出会った「もの」を通して、ここに一定の期間だけ暮らす一人の住人として、わたしは日本の「現在(Gegenwart/ゲーゲンヴァルト)」と向き合おうとしています。
いつも何かに手を動かしながら、わたしは、人、素材、方法、意味、精神、存在理由のあいだにある関係を絶えず探しています。そして、そこにある「もの」が、そうした関係を具体的で、手で触れられるものへと変えていくのです。
エンツィオ・ヴェッツェル
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